住宅の花粉対策~設備編~
スギ花粉の飛散がピークを迎え、花粉予報がニュースで流れる季節となりました。
それに続けと言わんばかりにヒノキ花粉の飛散時期が迫っており、花粉症の方には辛い季節が続きます。前回は、花粉症の負担を少しでも軽減するため「住宅プランで考える花粉対策4つ」をご紹介しました。今回は「住宅の設備面でできる花粉対策」はどのようなものがあるかを「設備編」としてお伝えしていきます。
目次
1.花粉対策(設備)の考え方
2.住宅設備での花粉対策その1「持ち込まない」
. 2-1. エアシャワーの導入
. 2-2. 玄関付近の手洗い設備
3.住宅設備での花粉対策その2「抑制する」
. 3-1.有害物質を抑制する「ナノイー」
. 3-2.花粉に対する有効性
. 3-3.おすすめの取り入れ方
4.住宅設備での花粉対策その3「取り除く」
. 4-1.床排気を採用した24時間換気システム
5.まとめ
花粉対策の基本は「吸い込み予防」「自分にくっつけない」「家に持ち込まない」の3つ。
その中でも、住宅プラン段階の花粉対策では「家に持ち込まない」「家から取り除く」ことを考えるというのが前回までの内容です。今回の設備編も「家に花粉を持ち込まない」「家に入った花粉を取り除く」という基本的な考え方はそのままに「空気中の花粉を抑制する」を追加した3つの観点で、住宅設備でできる花粉対策をお話ししていきます。
前回もお伝えしたように「人間に付着した花粉を家の中に入れない」ことが大切です。
ここでは「家に持ち込まない」ための設備を2つご紹介します。
“「衣類にくっついて家の中に持ち込まれる花粉」は「1時間の換気で窓から入る花粉」の6倍以上”
(出典:衣類に付着した花粉を家の中に「持ち込まない」ポイント | Lidea by LION)
というように、持ち込まれる花粉の大半は玄関から入ってきます。それならば「玄関ドアを開ける前に花粉を吹き飛ばせばいい」。そこで出てくるのがエアシャワーです。玄関前の外壁面に設置し、エアシャワーの吹き出し口から出るエアーを浴びることで衣類や頭髪についた花粉を吹き飛ばします。
エアシャワーはもともと食品工場や半導体工場、無菌室など工業・医療関連施設へ導入されるような設備ですが、家庭用としてサイズをコンパクトにした製品がございます。例えば、株式会社ニットー冷熱製作所のホームエアシャワーは
“主に衣服に付着した花粉や塵埃を約90%除去する効果”
(出典:株式会社ニットー冷熱製作所HP)
があります。玄関の形状によっては設置できない場合があるため、興味のある方はプラン初期段階で検討している旨を伝えておきましょう。
玄関戸をくぐったあとは、手や口・のどに付着した花粉を落としてしまいましょう。
リビングなどの居住空間に花粉を持ち込まないために、玄関内に手洗いを設けて洗い落してしまう方法です。シュークローク内やそのすぐそばに手洗いを用意しておけば、上着を脱いですぐに手指の花粉を洗い流すことができます(ウイルス対策としても有効です)。
「どこでも手洗い(LIXIL)」のようなミニサイズの手洗いカウンターはサイズ的にも取り入れやすいのではないでしょうか。「水回りなのでちょっとした掃除道具を一緒に置いておきたい」という方はトイレ用の手洗い器(手洗い下部に収納があるもの)を設置するとスマートに収納できます。
予算面で玄関専用に手洗いを置く余裕がない場合はあらかじめ洗面室を玄関近く(居住スペースを通らなくて済む位置)に設けておき、洗面と手洗い設備を兼ねて使用することでコストを抑えることができます。
家の中に花粉を全く入れないことは現実的でないため、家に入ってしまった花粉に対しアプローチすることは対策として重要です。ここでは花粉を抑制させる設備をご紹介します。
Panasonic開発のナノイーは、空気中の様々な有害物質を抑制することに効果がある製品です。アプローチできる有害物質は「菌・ウイルス」「カビ」「PM2.5」「花粉」「アレル物質(ダニ・昆虫の死骸・ペットのフケなど)」。その他に嬉しい機能として「脱臭効果」や「美肌・美髪効果」が望めます。
上述したような効果は「OHラジカル」を発生させて得られるもので、その発生量によってグレードが変わります(発生量が多い方が効果発揮までのスピードが早いです)。2023年3月時点で最上位グレードとなる「ナノイーX(48兆)」は「ナノイー」と比較してOHラジカルが100倍に。数年前のナノイーを使用している方は買替え検討しても良いくらい性能が向上しました。
花粉に対しては
“日本の主要な花粉(13種類)を抑制”
(参照:ナノイーXで日本の主要な花粉を抑制 | Panasonic)
「ナノイーX(48兆)」は6畳空間の花粉を約3時間で99%以上抑制という試験結果がでており、スギ・ヒノキだけでなく、年間を通して花粉対策をすることができます。
ナノイーXの搭載機種は「エアコン」「照明器具」「衣類乾燥除湿機」「扇風機」など多岐にわたり、中には「スポットライト型ナノイーX発生機」というスポットライトのような見た目で照明にさりげなく紛れ込ませるタイプの商品まであります。
「種類が沢山あって選べない」というときは、エアコンで居室(リビング・寝室など)の花粉にアプローチし、照明器具で非居室(内玄関・トイレなど)を対策していく方法はいかがでしょうか。照明器具で1箇所だけを選ぶなら玄関がおすすめです(家の中で花粉の浮遊量が一番多くなりそうな場所が玄関だからです)(臭気対策を考えればシュークローク上部をおすすめします)。
エアコンのナノイーX搭載機種は「エオリア」シリーズです。照明器具で取り入れる場合は「ナノイー搭載タイプの小型シーリングライトFreePa」がございます。
「抑制する」の次は「抑制した花粉」を取り除きましょう。空間に浮遊する花粉・床や棚に堆積した花粉を取り除くためにできることは「清掃する」か「空気ごと花粉を吸い取るか」の2つです。ここでは花粉を取り除くための設備を1つピックアップしてご紹介します。
「空気ごと花粉を吸い取る方法」としておすすめなのが、床排気となっている換気システムの採用です。「埃・花粉・臭気」は床面に溜まりやすい傾向があります。よくある壁や天井からの排気では排気口の位置が高いため、人が呼吸する口元周りの空間まで花粉が巻き上げて排出せざるをえません。その一方、排気口が床面設置であれば落ちた花粉をムーズに排気口へ排出できるため、空間を清浄に保ちやすくなります。
ハンズワタベで採用している24時間換気システム「マーベックス製の澄家(-sumika-)シリーズ」も床面排気の第一種換気システムです。窓を開けずに換気できることはもちろん、建物に給気する際に「外気に含まれる花粉や埃をフィルターでブロック」するため「外気中の花粉を家に持ち込まない」ことにも一役買ってくれます(性能を十分に発揮するためには適切なフィルターのお手入れが必須です)。余談ですがこのシステムは全熱交換型のため、換気の際に捨てられてしまう室内の暖かさや涼しさを熱回収(再利用)し、空調のランニングコストを抑えることも可能です。
今回は「住宅の花粉対策として何ができるか」を住宅設備の観点からご説明しました。
設備採用は、どうしても導入時のイニシャルコストがかかるため、全部を一気に取り入れることは難しいことが多いと思います。そんなときは、配管関係で後から取り入れることの難しい「全館換気設備」や「水回り」など設備を優先して計画し、後工事や後設置のきく「エアコン」や「置き型設備」は生活しながら様子を見て導入していく方法もございます。他の要望との優先順位をつけながら、自分たちに「今ちょうどいい」対策を見つけていくことが大切です。
ハンズワタベでは、どんな対策ができるか考えるお手伝いをさせていただきます。お気軽に「家づくりの相談窓口」までご相談ください。
OGスタッフOG staff
日常の「めんどくさい」を撃退すべく、心と身体が快適に生活できる方法を日々研究中の一級建築士(ハンズワタベOG)。お片付けマニアで「家を整えること」「楽できる方法」を考えるのが大好き。小児喘息の経験から片付けやすく掃除しやすい部屋作りを得意としている。
〈資格〉一級建築士、インテリアコーディネーター、整理収納アドバイザー2級、住宅収納スペシャリスト、ライティングコーディネーター、色彩コーディネーター2級、福祉住環境コーディネーター3級
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