注文住宅プランで考える花粉対策4つ
花粉症、特にスギ花粉のアレルギーを持つ方には辛い季節となりました。ある疫学調査では、スギ花粉症の有病率は甲信越で20%近くまで上昇しています。かく言う筆者も数年前に花粉症を発症し、2月前後は身構えてしまいます。
スギ花粉に限らず、花粉症になってしまうと「くしゃみ、鼻水、目のかゆみや、まれに喘息症状の併発」というように普段の生活が脅かされます。今回は、そんな辛い花粉症の負担を少しでも軽減するため「住まいづくりにおいての花粉対策」はどのようなものがあるかをご紹介します。
目次
1.花粉対策、基本の考え方
2.住まいでできる花粉対策(プランニング編)
. 2-1.ランドリールーム・サンルームの設置
. 2-2.シュークロークの+α
. 2-3.風除室の追加
. 2-4.掃除しやすい収納計画
3.まとめ
一般に多く取り入れられている花粉対策というと「吸い込み予防」「自分にくっつけない」「家に持ち込まない」があると思います。その中で住宅としてできる花粉対策は「家に持ち込まない」こと、さらに「家から取り除く」ことです。
今回は「家に花粉を持ち込まない」「家に入った花粉を取り除く」という2つの観点で、注文住宅の計画段階で検討したい花粉対策をお話ししていきます。
新築計画のプランニング段階で検討できる花粉対策について「家に持ち込まない」から3つ、「取り除く(取り除きやすくする)」から1つをご紹介します。
洗濯物に花粉を付着させないためにも、室内干しできるスペースの確保は有効です。ランドリールーム(「洗う・干す・たたむ(・片づける)」までを完結できる部屋)もしくはサンルームを設け、洗濯作業を室内で完結できる状態を作っておくと◎
ファミリークローク(使用頻度の高いものを集めた家族共用のクローク)と室内干しスペースを兼用する場合は注意が必要です。頻繁に外を出入りするもの(上着やカバンなど)を同じ空間へ保管することとなるため、「ファミリークロークへ持ち込む前に」しっかり花粉を払っておきましょう。
花粉も気になるけど室内干しの生乾き臭の方がもっと気になるという場合は「衣類乾燥機」がおすすめです。例えば、ガス乾燥機なら「乾太くん(リンナイ)」など。「乾太くん」の場合は洗濯物8㎏を約80分で乾燥させることが可能です。生乾き対策に留まらず「洗濯物の量に対して室内干しのスペースが足りない」という悩みも同時に解決できるため、子供の人数が多い方・職業柄服に汚れのつきやすい方には特に有用です。
ただ住宅でエアコン暖房を運転させる場合はどうしても室内空気が乾燥するため「室内に洗濯物を干しているからこそ、ちょうどよく加湿される」という面もあります。時期によって上手に使い分けると良いでしょう。
先ほどもお伝えしたように、頻繁に外を出入りするものの扱いは注意を払う必要があります。しかし「家に持ち込まない」の基本姿勢は必要ですが「全く持ち込まない」は現実的に難しいはずです(毎日毎日神経質に花粉を払ってもいられません)。そこで「家の中の居室エリアに持ち込まない」をご提案します。
一番有効なのは、花粉の付着量が多くなりがちな上着用の扉付収納を、玄関に隣接させて設けること。4人家族なら壁芯91㎝×91㎝で十分対応できます。上着単独で収納を設けることが難しければ、シュークロークの一角にコート掛けスペースを設けると良いでしょう。シュークロークは、可能であれば引き戸やドアでホールなど他空間と間仕切りし飛散防止することをおすすめします。
(ただし「玄関ホールとLDKの間に間仕切りがあるプラン」の場合は、きっちりシュークロークを囲い込む(間仕切りする)ことまで必要ないです。あくまで「居室エリアに持ち込まない」観点で考えていきます。)
風除室は読んで字のごとく風を除けるための空間ですが、風だけでなく花粉除けにも向いています。本来であれば玄関からダイレクトに入ってくる空気中の花粉も、風除室を挟むことで家の中へ入り込みにくくしてくれます。
花粉を払い落す作業も、玄関先で行うより外気や風に直接さらされない風除室内の方が行いやすくなります(ただし「パンパンと叩き払う」なら外でやってしまった方が良いです)。
風除室内で花粉を払うことに抵抗がある方・上手に撫で払えないという方はコロコロ(ハンディ―タイプの粘着ローラー)を使用すると花粉を飛散させずに取り除くことができておすすめです。「コートの花粉を払っている間に、中に着ていた服にも花粉がついた」なんてことになるのを防ぐことができます。
(風除室内にコロコロの置き場を作っておくと作業のハードルが下がります。はがしたコロコロを捨てるゴミ箱もセットで置くと◎)
どんなに対策しても室内に入る花粉を完璧に防ぐことはできません(無菌室は分かりませんが)。できることは「空気中への舞い上がりを防ぐ」「掃除しやすい状態をつくる」の2点です。ここでは掃除のしやすさ(=取り除きやすさ)で花粉に立ち向かいます(埃と花粉は親戚だと思って対策していきます)。
オープン収納はおしゃれ感がありますし「取り出しやすい・戻しやすい」というメリットがありますが、閉じた収納と比較して掃除の手間は倍増します。花粉対策(≒掃除対策)を考えるのであれば、メインを扉付収納で考えるのは一つの手です。
ただすべてを扉付収納にするのはおすすめしません。
「出しっぱなし収納」の方が楽なものもあります。ハサミ・のり・リモコンなどはすぐ使いたいので、出しっぱなしの方が良い。整理収納の観点からも「収納するときのアクションは1つでも減らしたい」のが本音です。1アクション増えるごとに「決めた置き場に戻すモチベーションが下がるから(さっくりいうと面倒だから)」です。でも掃除はラクしたい。
そこで「使用頻度が(毎日使うくらい)高いものをオープン収納」「そうでないものを扉付収納」として仕分けることをご提案します。飾り棚は「花粉が(お掃除が)辛い時期だけお休み!(=物を置かない)」としてしまうのもありです。何もずっと何かを置いておく必要はありません。
最近オープンクローゼットをご提案する機会が増えていますが、この場合は無理に扉付にする必要はないです。「ロールスクリーンを扉の代用にする」ことで花粉(埃)被りの抑制が可能です。(無理に据え付けでなくとも、ホームセンターで伸縮ポールと丸に通すタイプのレースカーテンを購入しご自分で取付けするのもありと思います。)
今回は「住宅の花粉対策として何ができるか」をプランニングの観点でご説明しました。
一つ気に留めていただきたいのが、これはあくまで「花粉対策一点のみを重視した場合のプラン」であるということです。例えば、地震対策になればシュークロークはオープンタイプにして防災セットを置いた方が、いざというときに「引き戸が開かなくて取り出せなかった」などというリスクを避けられます。
プランには一長一短があり、すべてが完璧なプランは存在しません。花粉対策についても同様で、全てやろうとするのではなく、優先順位を考慮したうえで自分たちの望む形に合う対策を取り入れていくことが大切です。
ハンズワタベでは、お客様にぴったりのプランは何なのか一緒に悩んで、形にするお手伝いをさせていただきます。お気軽に「家づくりの相談窓口」までご相談ください。
OGスタッフOG staff
日常の「めんどくさい」を撃退すべく、心と身体が快適に生活できる方法を日々研究中の一級建築士(ハンズワタベOG)。お片付けマニアで「家を整えること」「楽できる方法」を考えるのが大好き。小児喘息の経験から片付けやすく掃除しやすい部屋作りを得意としている。
〈資格〉一級建築士、インテリアコーディネーター、整理収納アドバイザー2級、住宅収納スペシャリスト、ライティングコーディネーター、色彩コーディネーター2級、福祉住環境コーディネーター3級
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